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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

「さ、正雄ちゃん、あんた下へ行って、叔母ちゃんに早う冷たいもん持って来たげるように、お久どんに云うといで。さ、正雄ちゃん、お母ちゃんの云うこと聴きなさい。―――」

そう云って姉は、四つになる梅子を膝の上に抱き取りながら、

「芳雄ちゃんは下へ行って団扇取って来なさい。秀雄ちゃん、あんた兄ちゃんやないか、兄ちゃんが先に下へ行かないけません。さ、お母ちゃんは久し振で叔母ちゃんと話があるのんに、そない引っ着かれたら話が出来しませんやないか」

「秀雄ちゃんはいくつになるのん」

「僕九つや」

「九つにしたら大きいなあ、さっき門で遇うた時、哲雄ちゃんか思うたわ」

「柄は大きゅうても、この通りお母ちゃんの傍にばかり喰っ着いてて、ちょっとも兄ちゃんらしいことあれへんねん。………哲雄になると、もうそろそろ中学校の準備があるさかい、勉強の方が忙しいて、そんなにやんちゃなこともないねんけど、………」

「女中はお久どん一人やてなあ」

「ふん、こないだまではお美代どんもいてたけど、大阪へ帰らしてほしい云うし、梅子がよう一人歩きするようになったよってに、子守もいらんことや思うて、………」

それでも幸子は、さぞかし姉が所帯窶れをしているであろうと想像していたのに、思ったよりは髪かたちも小綺麗に、身なりを整えているのを見ては、どんなになっても嗜みを忘れない