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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
尾について云った。ねえ、お父さん、小泉さんとこへ避難しようじゃないか、此処にいて潰されてしまっちゃ詰まらないじゃないか、………まさか潰れもしないだろうが、或は避難する方が安全かも知れん、―――しかし寝てる所を起すのも悪かないだろうか、………と、辰雄は躊躇したが、そんなこと云うてる場合やあれしませんで、………この大嵐に小泉さんとこかて起きてはりますがな、と、鶴子が云うと、それを切掛けに誰も彼も避難しよう避難しようと云い出した。小泉と云うのは、裏の塀一重向うの家で、勝手口から出ればその家の裏門が一と跨ぎの所にあった。主人は退職の官吏とやらで、老夫婦に息子一人の三人暮しをしているのであったが、たまたまその息子の通っている中学が、輝雄の今度転校した中学と同じ学校だった関係から、便宜を計ってくれたことなどがあって、辰雄も輝雄も、二三度その家の応接間へ通ったことがあるのであった。と、女中部屋にいたお春とお久とが、何かこそこそ相談し合っている風であったが、その時出て来て、そんならちょっと、小泉さんとこまでお久どんと二人で様子を見に行って参りましょう、と、お春が云った。