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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

―――」

幸子は実はこの舞の会が済んでからと思っていたのであったが、夫婦の間にこんな話が出た二三日後、或る朝妙子が、この間の舞姿を写真に撮って置きたいからもう一遍あの衣裳を貸してくれと云って、畳紙の包を取り揃えて衣裳行李に入れ、それと、鬘の箱と、あの時の傘とを自動車に積んで出掛けたあと、折よく二人きりになったので、

「きっとこいさん、あの荷物持って板倉の所へ写しに行くねんで」

と云うようなことからしゃべり出して、去年の九月東京で奥畑の警告を受け取った驚きから、最近の舞の会に於ける廊下の活劇に至る迄を、掻い摘んで語った。

「そんなら、あのライカ壊れたやろか」

と、雪子は一と通り聞いてしまうと、先ずそんな風なことを云った。

「さあ、どうやろか。貞之助兄さんは、あれやったら少くともレンズに疵が附いたやろう云うてはったけど」

「フィルムもあかんようになったのんで、撮り直すのんと違うやろか」

「ほんに、そうかも知れんわな。―――」

幸子は雪子が今の話を至って平静に聴いた様子を看て取りながら云った。

「あたしも今度と云う今度は、あんじょうこいさんに裏切られた云う気イして、考えると腹が立つねんわ。