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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

祝杯を挙げましょう。」

北村は菅原の顔を見つめた。

「君は、私をからかってるのかい。」

「とんでもない。真面目に言ってるんです。」

北村は急に笑った。

「うむ、分ったよ。私は怒りだすところだった。君のいつもの悪い癖だ。人に誤解されるよ。そんなだから、無籍者なんて噂も立つ。不正事件の嫌疑も受ける……。」

北村は酔うと、ものを胸にしまっておけなくなるのだ。――彼は天元社内の不祥事件を打ち明けた。印刷用紙の一部がひそかに他へ転売されたらしいこと、その不正行為の疑いが菅原にもかけられてるらしいことなど。

菅原はしばらく考えこんだ後、軽蔑的な微笑を浮べた。

「そいつは、おかしな話ですね。」

「そうさ、ばかばかしいことだ。然し、君の方もあまりよくはない。旅に出たきり音沙汰なしだからね。」

「いえ、僕のことではありません。不正事件そのものが、おかしいですよ。そこには、なにか巧妙なトリックがあるような匂いがしますね。」

「巧妙なトリックによって不正が行われたんだ。」

「むしろ、不正事件が捏造されたんだと、僕は言いたいですね。些細な不正は、或は幾度かくり返して行われてるかも知れません。