轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

千重子と八重子がいっしょにやって来た。

八重子はくすりと笑って言った。

「お姉さま、とてもずるいのよ。」

富子が探るような顔をその方へ向けた。

「お父さまが、あのビラ……なんとかいう薬を、お姉さまに、注射してみろと仰言ったのよ。これからの家庭の婦人は、皮下注射ぐらい覚えておかなければいけないんですって。すると、お姉さま、親の肌に針を刺すことは気持ちが許しませんと、大真面目に仰言るのよ。注射の仕方を知らないと、簡単に言えばよいのに、ねえ。」

「あら、八重子さんだって、同じことを言ったじゃないの。」

「わたくしの方へお鉢が廻ってきたから、お姉さまの真似をしただけよ。」

「真似するのは、なおわるいわ。……でも、お父さま、嬉しそうにお笑いなすったわね。よく見覚えておきなさいと、御自分でなさりながら、嬉しそうだったわ。」

「もう済んだんですか。」と富子夫人は尋ねた。

「ええ、すっかり。」

富子夫人は黙って立っていった。

「ねえ、小父さま、このお酒、どう。」

「うむ、上等だ。」

「わたくしも、一杯いただこうかしら。」

「一杯でも二杯でも、遠慮なく飲みなさい。」

八重子が、まるい眼をくるりと動かした。