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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

と柳田さんはまた探りの先の神経を示して、

「大和魂では私が負けましたよ、ハッハハハハ」

と左の人さし指をあらためたら、歯跡が残っていた。

「よろしゅうございましたわね」

と忠義一図のおくさんはご主人がかまれても満足のようだった。正三君は笑いくずれて、かたわらの椅子につかまっていた。あまりにぎやかだったので、控え室から患者がのぞきにきた。柳田さんは手早く治療をおわって、

「また明日おいでください。もう痛いことは絶対にありません」

といった。

「さよなら」

と照彦様はおじぎをしたばかりだった。正三君はきのどくになって、

「失礼申しあげました」

とかわっておわびをした。

外へ出てから照彦様は、

「どうだ? 内藤」

といばった。

「驚きました」

と答えて、正三君はまた笑いだした。照彦様のわがままはいま始まったことでないが、これほどまでとは思わなかったのである。

「僕と柳田さんとどっちが大和魂がある?」

「さあ」

「僕は痛くても痛いとはいわなかった。柳田さんは大騒ぎをしたぜ」

「しかし……」

「しかしなんだい?」

「しかしあれは不意打ちを食ったからでしょう? 患者にかまれるとは思わなかったんです」