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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
僕も男です」
「それじゃお願いいたしましょう。どうぞお口をおあきください」
と柳田さんは治療にとりかかった。
照彦様は約束の手前、かなりしんぼうがよかった。またガリガリがあったけれど、苦情をいわなかった。まもなく柳田さんは歯のうつろの中を探りでかき廻しはじめた。たちまち照彦様は、
「ああ……」
と叫んで、ピクリとからだを動かした。大和魂があるから、痛いとはいわない。
「えらいですな。もうすぐですよ」
「ああ……」
「これです」
と柳田さんは探りの先についてきた糸のようなものを示した。
「もういいんですか?」
と照彦様は伸びあがった。
「もう一つです。神経は三本にわかれていますからね。もう一ぺん大和魂ですよ」
「ああ……」
「痛い痛い。痛い!」
と悲鳴を揚げたのは照彦様でなくて柳田さんだった。
「大和魂、大和魂」
と照彦様は柳田さんの指をかんだままいった。
「若様、痛いです。痛い痛い」
「若様、もうかんにんしてあげてください」
とおくさんがあやまった。照彦様ははなして、
「とれましたか?」
ときいた。よほどがまんしたと見えて、目に涙がたまっていた。
「これです。お痛かったでしょう?」