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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「それじゃ皆であずかろう」

「そうしてくれたまえ。しかしきみが級長だ。松村君!」

「よし」

と松村君は教壇へあがっていって、

「諸君、堀口君の退校届をあずかるよ」

と皆の同意をもとめた。

「諸君、僕がわるいことをしたらすぐに松村君にいってくれたまえ。そうすれば松村君がこれを橋本先生に出す。そうすれば僕はもう学校へ来られなくなる。仕方がないんだ」

と堀口生はどこまでも神妙だった。それから届書を封筒に入れてわたして、

「約束、約束。きみが代表だ」

と松村君の手をにぎった。一同拍手喝采した。ちょうどそこへ弁慶がはいってきた。これは小使いの関さんが掃除をする時のあだなだ。頬かぶりをして、箒をなぎなたのように持っている。

「なんだ? また喧嘩か?」とびっくりした。

「関さん、きみにもあやまる」

と堀口生はおじぎをした。同時に皆ワイワイいいながら教室を出た。

橋本先生はその後なんともいわなかったが、堀口生を級一同にあずけたのだった。これが最後のお慈悲のことはわかっている。堀口生は今度問題をおこせばおっぽり出されるはずだったが、幸いにして喧嘩は負けになっていた。なぐられた上に退校ではいくら今までのことがあってもあまりかわいそうだ。