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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
と照彦様は正三君をダシに使った。
「運動ですか? 結構ですな。お庭でおやりなさい」
「しかしあれは雪のないところではできません」
「そのうちに降りましょう」
「降っても山へいかないとできません」
「おやしきにはお庭にも裏にも山があります。スキーにボール、弓術にお相撲」
と安斉先生は万事承知の上で空とぼけている。若様がたをよそへ出すことには反対だ。
二人は学監室を辞し去ってまた庭へ下りた。
「二十番。上がりも上がったものだ。内藤君」
と照彦様は後ろから正三君に組みついた。
「危ないですよ」
「相撲だ」
「下駄がぬげました」
と内藤君は芝生の上に坐ってしまった。照彦様は寝ころんで、
「ここで話そう」
「はあ」
「僕は上がってよかったよ。安斉先生はうっかりできない」
「なぜですか?」
「あれは切腹するくせがある」
「まさか」
「いや、お父様がお若くてむやみにお酒を召しあがった時分、すんでのことに切腹しかけたそうだよ」
「ははあ」
と正三君は驚いた。
「洋行からお帰りになった頃の話だ。僕は富田さんから聞いた。お父様がお泊まりがけでお酒を飲むものだから、お母様始め皆で申しあげたが、叱られるばかりさ。