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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「おトンカチをおとしてきた」

「黙っていて明日の朝拾ってくればいいです。僕も実はバットがありません。大入道がくしゃみをした時、はなしてしまったんです」

と正三君もあわてていた。

有本さん黒須さん矢島さんと妙に先生の番が続いて、そのつぎが照正様だった。杉山が待っているから怖くない。坂道へかかった時、

「杉山」

と小声で呼んでみた。

「ワーウウウ」

と杉山はすぐ側の薮の中から答えた。

「ああ、びっくりした。こんなところにいるのかい?」

「はあ。上の方は怖くていけません」

「今度は安斉先生だ。うまくやってくれ」

と照正様はうちあわせをした。型のごとく姓名をしたためて、帰り道にまた、

「杉山」

「はあ」

「もっと上の方へいっていろよ」

「はあ」

「寒いだろう?」

「かぜをひいたようです。しかしおもしろいです。くしゃみをしたら、黒須先生がひっくりかえりました」

といいながら、杉山はまたくしゃみをした。

つぎに安斉先生があらわれた。杉山は帰りに後ろからとびかかるつもりだった。あわててつまずいたところを、

「先生、杉山です」

と呵々大笑してやる。まさかおこりもしまいと考えていた。安斉先生は社頭に着いてから大分手間をとった。