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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「ハッハハハ」

と照彦様が両手で頭をおさえて笑った。

「こらこら!」と照常様が叱った。

「だいたいこれぐらいの時刻でしょう。お寒い晩ですから」

と国語漢文の有本先生は寒ければ時計が早く進むようにいって、

「それでは照彦様、よくご精が出ました」

とおじぎをした。黒須さんが多少がんばるだけで、ほかの二人はごきげんとり専門だ。

若様がたは安斉先生がいるとすぐにめいめいお部屋へひきさがるが、ほかの先生がたばかりだと自習後うちとけて話しはじめる。

「矢島先生」

と照常様がニコニコしながら呼びかけた。

「なんでございますか?」

「僕、昨日おもしろい魔法を覚えてきました。先生を試験してあげます」

「それはそれは」

と矢島先生はごく人柄がいい。

「英語ですよ。ブラック・アートというです。なんとお訳しになりますか?」

「照常」と照正様がさえぎった。

「なんですか?」

「先生にむかって試験なんて失礼だぞ」

「冗談ですよ」

「冗談でもいけない」

「それじゃ照彦、お前にきこう」

と照常様は上でいけなければ下にむかうより外なかった。

「知りません」

「知りませんて、なにをきいたのかわかっているのか?」

「わかりません」