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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「二人でたたきおとそう」

と発起した。

「危ないです」

「きみは勇気がないな。それじゃ相撲に勝ってもだめだ」

「…………」

「さあ、肝だめしだ。一二三でたたいて逃げだそう」

「逃げる肝だめしなんかありません」

「こわいものだから理屈をいっている」

「それじゃさされても知りませんよ」

と正三君も今はよんどころなく、鉄砲を逆にした。

実は二人ともこわいのだった。しかしこうなるとおたがいに意地で仕方がない。木の枝を分け蜘蛛の巣をはらっておく深く進んだ。実に大きな巣だ。一年や二年でできたものでない。電燈のかさぐらいある。ことわざにも蜂の巣をつついたようだという。すでに三発見まわれて、ブンブンうなっている。それを叩いたのだからたまらない。二人はほとんど同時に、

「アッ!」

と叫んで、その場にひれふした。顔と頭をやられたのである。今は見栄も外聞もない。主従先をあらそって逃げだした。

「痛い。頭中が熱い」

と照彦様は畑まできて立ちどまった時、涙を流していた。

「ひどい目にあいました。若様、ここでひやしましょう」

と正三君はかたわらの井戸を指さした。二人はそこで応急手あてにとりかかった。