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おいついたゆめ

追いついた夢

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页

青空文庫

和助は酒には手を出さずにこう云った。

「それはおまえの家のほうと縁を切るつもりになって呉れることだ、毎月の定った物はきちんと送るし、おふくろさんにもしものことがあれば別だが、さもない限り往き来をして貰っては困る」

「はい、それは此処のおかみさんからうかがっています」

「つまり私は遁世したいのだ、おちついたらいずれ身の上話もするが、世間からも人間からも離れたい、煩わしいつきあいや利慾に絡んだ駆引や、いっさいのうるさい事からさっぱりと手を切って、静かに、誰にも邪魔をされずに余生をおくりたいのだ」

おけいは俯向いたままそっと頷いた。

「それにはこんど一緒に住む家のところなんだが、これは私の身内の者にも知らせてないし、おまえの家のほうにも知らせないことにする、誰か一人にわかるとつぎつぎに弘まって、しぜんと人が出入りするようになるものだ、これもはっきり断わっておくが、いいだろうな」

和助の口のききかたは押しつけるような調子になった。おけいはこれにもすなおに頷いて、それから眼をあげてきいた。

「阿母さんになにかあったときは、すぐわかるようにして下さるんでしょうか」

「それはむろんそうするし、おちついたらときどきみまいにも遣ってやろう、ただところだけは決して知らせてはいけない、これだけをはっきり断わっておいて、それで承知なら世話