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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
「そうです。だから恋愛の希望を前途に持っているという君なんぞの為めには、ワイニンゲルの論は残酷を極めているのです。女には恋愛というようなものはない。娼妓の型には色欲がある。母の型には繁殖の欲があるに過ぎない。恋愛の対象というものは、凡て男子の構成した幻影だというのです。それがワイニンゲルの為めには非常に真面目な話で、当人が自殺したのも、その辺に根ざしているらしいのです」
「なる程」と云った純一は、暫く詞もなかった。坂井の奥さんが娼妓の型の代表者として、彼れの想像の上に浮ぶ。くことを知らない polype の腕に、自分は無意味の餌になって抱かれていたような心持がして、堪えられない程不愉快になって来るのである。そしてこう云った。
「そんな事を考えると、厭世的になってしまいますね」
「そうさ。ワイニンゲルなんぞの足跡を踏んで行けば、厭世は免れないね。しかし恋愛なんという概念のうちには人生の酔を含んでいる。Ivresse を含んでいる、鴉片や Haschisch のようなものだ。鴉片は支那までが表向禁じているが、人類が酒を飲まなくなるかは疑問だね。Dionisos は Apollon の制裁を受けたって、滅びてしまうものではあるまい。