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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
十二
因襲というのは、その縛が本能的で、無意識なのです。新人が道徳で縛られるのは、同じ縛でも意識して縛られるのです。因襲に縛られるのが、窃盗をした奴が逃げ廻っていて、とうとう縛られるのなら、新人は大泥坊が堂々と名乗って出て、笑いながら縛に就くのですね。どうせ囚われだの縛だのという語を使うのだから」
大村が自分で云って置いて、自分が無遠慮に笑うので、純一も一しょになって笑った。暫くしてから純一が云った。
「そうして見ると、その道徳というものは自己が造るものでありながら、利他的であり、social であるのですね」
「無論そうさ。自己が造った個人的道徳が公共的になるのを、飛躍だの、復活だのと云うのだね。だから積極的新人が出来れば、社会問題も内部から解決せられるわけでしょう」
二人は暫く詞が絶えた。料理は小鳥の炙ものに萵苣のサラダが出ていた。それを食ってしまって、ヴェランダへ出て珈琲を飲んだ。
勘定を済ませて、快い冬の日を角帽と鳥打帽とに受けて、東京に珍らしい、乾いた空気を呼吸しながら二人は精養軒を出た。
十二
二人は山を横切って、常磐華壇の裏の小さな坂を降りて、停車場に這入った。