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せいねん

青年

森 鴎外

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页

青空文庫

その議論の結果は芸者に美人がないではないが、皆拵えたような表情をしていて、芸者という type を研究する粉本にはなっても、女という自然をあの中に見出すことは出来ないということになった。この「女という自然」は慥に安に於いて見出すことが出来ると瀬戸に注意せられて、純一も首肯せざるを得なかった。話し草臥れて瀬戸が帰った。純一は一人になってこんな事を思った。一体己には esprit non procup が闕けている。安という女が瀬戸の frivole な目で発見せられるまで、己の目には唯家主の娵というものが写っていた。人妻が写っていた。それであの義務心の強そうな、好んで何物をも犠牲にするような性格や、その性格を現わしている、忠実な、甲斐甲斐しい一般現象に対しては同情を有していたが、どんな顔をしているということにさえも、ろくろく気が附かなかった。瀬戸に注意せられてから、あの顔を好く思い浮べて見ると、田舎生れの小間使上がりで、植木屋の女房になっている、あの安がどこかに美人の骨相を持っている。色艶は悪い。身綺麗にはしていても髪容に搆わない。それなのにあの円顔の目と口とには、複製図で見た Monna Lisa の媚がある。