轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
人間の足音ではない。それが一つ一つ部屋を覗いて歩くのだ。起きていると通り過ぎてしまう。寐ているなら行燈の油を嘗めようというのだね。だから行燈は自分で掃除しなくても好い。廊下に出してさえ置けば、狸奴が綺麗に舐めてくれる。それは至極結構だが、聖堂には狸が出るという評判が立ったもんだから、狸の贋物が出来たね。夏なんぞは熱くて寐られないと、紙鳶糸に杉の葉を附けて、そいつを持って塀の上に乗って涼んでいる。下を通る奴は災難だ。頭や頬っぺたをちょいちょい杉の葉でくすぐられる。そら、狸だというので逃げ出す。大小を挿した奴は、刀の反りを打って空を睨んで通る。随分悪い徒らをしたものさね。しかしその頃の書生だって、そんな子供のするような事ばかししていたかというと、そうではない。塀を乗り越して出て、夜の明けるまでに、塀を乗り越して帰ったこともある。人間に論語さえ読ませて置けばおとなしくしていると思うと大違いさ」
狸の話が飛んだ事になってしまった。純一は驚いて聞いていた。
そこへ瀬戸が来て、「君会費を出したか」と云うので、純一はやっと気が附いて、瀬戸に幹事の所へ連れて行って貰った。