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せいねん

青年

森 鴎外

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页

青空文庫

誰の書物をでも見るが好い。殆ど皆そんな風に観察している。こっちでは又西洋人が太古のままの個人主義でいて、家族も国家も知らない為めに、片っ端から無政府主義になるように云っている。こんな風にお互に mconnaissance の交換をしているうちに、ドイツとアメリカは交換大学教授の制度を次第に拡張する。白耳義には国際大学が程なく立つ。妙な話じゃないか」と云って、大村は黙ってしまった。

純一も黙って考え込んだ。しかしそれと同時に尊敬している大村との隔てが、遽かに無くなったような気がしたので、純一は嬉しさに覚えず微笑んだ。

「何を笑うんだい」と、大村が云った。

「きょうは話がはずんで、愉快ですね」

「そうさ。一々の詞を秤の皿に載せるような事をせずに、なんでも言いたい事を言うのは、我々青年の特権だね」

「なぜ人間は年を取るに従って偽善に陥ってしまうでしょう」

「そうさね。偽善というのは酷かも知れないが、甲らが硬くなるには違いないね。永遠なる生命が無いと共に、永遠なる若さも無いのだね」

純一は暫く考えて云った。「それでもどうにかして幾分かその甲らの硬くなるのを防ぐことは出来ないでしょうか」