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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
色の蒼白い、美しい女である。今まで飯の給仕に来たり、昼寐の床を取りに来たりした女中とはまるで違って、着物も絹物を着ている。
「あの、新聞を御覧になりますなら、持って参りましょう」
俯向いた顔を挙げてちょいと見て、羞を含んだような物の言いようをする。
「ああ。持って来ておくれ」
別に読みたいとも思わずに、唯女の問うに任せて答えたのである。
女はやはり俯向いて、なまめかしい態度をして立って行った。
純一が起きて火鉢の側へ据わった処へ、新聞を二三枚持って来たのは、今立って行った女ではなかった。身なりも悪く、大声で物を言って、なんの動機もなく、不遠慮に笑う、骨格の逞しい、並の女中である。純一はこの家に並の女中の外に、特別な女中の置いてあるのは、特別な用をさせる為めであろうと察したが、それを穿鑿して見ようとも思わなかった。
純一は一枚の新聞を手に取って、文芸欄を一寸見て、好くも読まずに下に置いた。大村の謂うクリクに身を置いていない純一が為めには、目蓋いを掛けたように一方に偏した評論は何の価値をも有せない。
それから夕食前に少し散歩をして来ようと思って、ぶらりと宿屋を出た。