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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
あれはその頃知らず識らずの間に、所謂自然派小説の影響を受けている最中であったので、初めに狙って書き出した Archasme が、意味の上からも、詞の上からも途中で邪魔になって来たのであった。こん度は現代語で、現代人の微細な観察を書いて、そして古い伝説の味を傷けないようにして見せようと、純一は工夫しているのである。
こんな事を思って、暫く前から勝手の方でがたがた物音のしているのを、気にも留めずにいると、天井の真中に手繰り上げてある電燈が突然消えた。それと同時に、もう外は明るくなっていると見えて、欄間から青白い光が幾筋かの細かい線になってさし込んでいる。
女中が十能を持って這入って来て、「おや」と云った。どうしたわけか、綺麗な分の女中が来たのである。「つい存じませんのでございますから」と云いながら、火鉢に火を活けている。
ろくろく寝る隙もなかったと思われるのに、女は綺麗に髪を撫で附けて、化粧をしている。火を活けるのがだいぶ手間が取れる。それに無口な性ででもあるか、黙っている。
純一は義務として何か言わなくてはならないような気がした。
「ねむたかないか」