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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
それから近頃になって、自分の思想を点検して見るようになったのです。いつかあなたと新人の話をしたでしょう。丁度あの頃からなのです。あの時積極的新人ということを言ったのですが、その積極的ということの内容が、どうも僕にははっきりしていなかったのです」
給仕が大村の前にあるフライの皿を引いて、純一の前へ来て顔を覗くようにした。純一は「好いよ」と云って、フォオクを皿の中へ入れて、持って行かせて話し続けた。「そこで折々ひとりで考えて見たのです。そうすると、自分の思想が凡て利己的なようなのですね。しかもけちな利己主義で、殆ど独善主義とでも言って好いように思われたのです。僕はこんな事では行けないと思ったのです。或る物を犠牲にしなくては、或る物は得られないと思ったのです。ところが、僕なんぞの今までした事には、犠牲を払うとか、献身的態度に出るとかいうような事が一つもないでしょう。それからというものはあれも利己的だ、これも利己的だと思ったのです。それだもんですから、貞操ということを考えた時も、生活の受用や種族の継続が犠牲になっているという側を考えずに、自己の保存だ、利己的だという側ばかり考えたのです」