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こくびゃくストーリー

黒白ストーリー

杉山 萠円

「黒白」1925(大正14)年5月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,356 字 · 42 页

青空文庫

――6――

二人していつの間にかねむっている徳市をゆり起し、顔や手足を洗わせ、着物を脱がせて身体を拭い上げ、美事な背広や中折や靴やオーバーを与えて立派な紳士に作り上げた。そうして二階へ連れ上げた。

徳市はやっと眼をさました。そこは立派な居間で真中の机に洋食弁当の出前が二つと西洋酒の瓶が二三本並んでいた。

憲作は美人を徳市に紹介した。

僕の家内の美津子です……

徳市は夢に夢見るようにお辞儀をした。しきりに洋服の着工合を直した。しかし眼の前に御馳走を並べられると真剣に喰い付いた。

憲作と美津子は顔を見合わせて笑った。

――6――

憲作は徳市を連れて二三町往来を歩いた。

徳市は酔って満腹して紳士になって夢心地でついて行った。

憲作は辻待自動車を呼んで二人で乗って、東京第一の宝石店王冠堂へ来た。自動車を表に待たしたまま中に這入った。

憲作は入口の処で徳市に云った。

何でも黙って……

うなずいているのですよ……

徳市はわけもなくうなずいた。

憲作は帳場の方へ行った。

徳市は店の鏡にうつった自分の姿を見てハタと立ち止まった。……素晴しい若紳士……日に焼けた……骨格の逞ましい堂々たる最新流行……