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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その熔解工は通称スミタキと言って、うちの工場には古くからそれ専門の職人がいた。鋳物師とは別にこれは熔解師と呼ばれているほど、このスミタキの仕事は専門の技術を要するのである。
鋳物師のカタゴメもむずかしい仕事で、これはおやじが自分でやっていた。ナマガタと言って、水分をふくんだ砂で鋳型をつくるのだ。砂だらけになって働くので、「砂むぐり」というのはここから来ている。
この鋳型作りは、水のふくませ方、その砂の押し工合(おやじは地下足袋をはいて、足で踏んで押していた)などに微妙なコツがあって、永年の修練が必要なのだ。鋳物のよしあしは、この鋳型の出来工合にかかっているとさえ言われる。
さて、その鋳型に「湯」をそそぐ第三工程ののちに、第四工程として仕上げ作業がある。鋳造された品物の砂落し、研磨、それの組立や塗装もこの工程にはいっているが、これはフキの日にはやらない。
カタゴメ作業、「湯」をつくる熔解作業、鋳型に「湯」をそそぐ注湯作業、これをやる日をフキの日と言う。毎日やっているわけではないから、特にフキの日と言うのだが、
「さ、明日はフキだ」
となると、家中が緊張したものだ。