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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
俺はしかし、出て行かなかった。俺の持っていた組合をボル派にそっくりさらわれた俺は、みっともなくて、アナーキストの同志の前に顔が出せたものではない。
ボル派はこういう場合――と言ってもボル派の組合がアナ派にさらわれるという場合はないのだが、しかし、そういったような場合、オルグの俺はよそへ配置される。そういう仕掛けになっているようだが、自由をたっとぶ俺たちのほうでは、そんな官僚組織みたいなことはしない。自分で開拓した組合は、自分があくまで面倒を見ていて、それが潰れたら、よそへ回して貰えるなんて、そんな甘いことは許されなかった。自分でまた新しく開拓しなくてはならない。それを俺はやってなかった。ヤチモロの四郎さんは、ウツツを抜かしたガセビリに逃げられて腑抜けと化していたのか。
俺はメーデーのデモを街で見ていた。赤旗でうずまったなかに、少数ながらも、印刷工のかかげる黒旗を見たときは、俺の胸はじーんとなった。畜生! と俺は心のなかで叫んだ。
そうだ、畜生! で思いついたが、俺のリン病は――あれなりもう診療所へは行かなかったけど、最後の仕上げにかかっていたということはもうなおっていたということだった。