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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「そいで、今の砂馬さんは、あのころとはちがって、自分をぶっつけて行けるものが見つかったわけか」
「まだ、その、見つけた、つかんだと、はっきりは言えないがね」
俺は盃をあげて、やーと形式的に砂馬に言って、
「砂馬さんはあの北槻中尉と仲良しなのかい」
「どうして?」
「斎田さんは、あの中尉を俺とも、そのうち、仲良くしてみせると言った。今はカタキ同士でも、国を憂える点では同じだと言った」
「加柴はそれでなんと答えた」
「別になんにも……」
熱い酒を俺は立てつづけに飲んで、
「あれは軍人のくせに、すこしボルかぶれのほうじゃないかな」
「そうじゃないだろう。いや、そうじゃない」
「だってレーニンを研究してるとか……」
「参考にしてるんだろう。あの北槻中尉は俺にこう言ってた。軍人として国のために命を捧げるのはいいが、今の日本の、金儲けしか眼中にないような資本家階級のために命を捨てるんではやりきれない。奴らの手先をつとめさせられるのは、かなわない。こう言うんだが、あれも俺と同じ水呑み百姓のせがれなんだ。今のような世の中では、百姓が可哀そうだ。地主に搾取されてる百姓も惨めなら、資本家に搾取されてる労働者も惨めだ。