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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
慷堂がにわかに俺には、その言うことならなんでも聞かずにはいられないといった抗しがたい力を持った人物に見えてきたのである。
砂馬と一緒の女郎買いは、あれ以来初めてのことだった。あれとは、吉原で砂馬が「面白い遊び」をしようとして、ことわられ、追い出された夜のことである。俺にとっては、俺がクララこと瀬良照子を知った夜である。
この前とちがって二流の上ぐらいの家だったが、砂馬はおなじみさんとして遇されていた。これならいいと俺は安心した。
砂馬のなじみの若い女が出てきて、ひとまず酒ということになった。
「こちらの兄さんに、いい子を世話してくれ」
と砂馬はやり手婆あに言った。
「はいはい。どんなおいらんがいいでしょうね。お若いから、やっぱり若い子でしょうね」
俺に言わないで、やり手は砂馬に聞いた。酔っていた俺は、
「俺が若いから、若くないほうがいいね、親切なおいらんがいいね」
と言った。つまらんことを言ったものだ。
年増好みと見られたのか、全くもって若くない、年増も年増、大年増のおいらんが俺のあいかたということになった。
「さ、兄さん」
「うん」
クララが言った、おトコつけましょう、あれのことだが――その夜の俺は、とんと、それが駄目だった。