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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

軍人に復讐するためのピストルを、軍人を通して手に入れねばならぬというのは皮肉な話だった。皮肉というより矛盾か。それに眼をつぶったのには、わけがある。

福井大将の暗殺が未遂に終って、狙撃事件だなんてみっともない名をつけられ、しかもブル新聞に、あれは実弾でなく、単なる売名のための空弾を放ったにすぎないなどと書き立てられたのは、それに使用したピストルが駄目だったからだ。同志がわざわざ上海まで潜行して、苦心して入手したレンコン(ピストル)は、いざとなると役に立たなかった。ひどく旧式な蓮根式のあのピストルがチャチだったのか、それともタマが、インチキなのをつかまされたのか、古くなって火薬がどうかしたのか。そこのところはよく分らないが、ほんとなら福井大将の心臓をうしろからぶち抜いているはずの、そんな近くで射ったタマが、てんで皮膚すら貫けない始末で、ちょっとした火傷を相手の背中におわせただけだった。くやしいったら、ありゃしない。そのくせ、これで同志二人は死刑になった。

あのときは、手製の爆弾も用意してあった。ポケットに入れてあったのだが、かんじんのピストルがなにしろそんな始末なんで、たちまち取りおさえられて、爆弾を使うところまでいかなかった。