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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「旦那、旦那、いい子がいますよ」

牛太郎が呼びこみをやっている。

「兄さん、モダンな子、いかが」

と俺に呼びかけた。

陰惨な私娼窟からここへ来ると、ここはまるで大厦高楼が立ち並んでいる印象だった。大名屋敷の式台みたいな、ぴかぴか光った板の間に、盛装をしたおいらんが商品見本のように立っている。もとはみんな、こうして店先に出ていて、ちょんちょん格子から客にのぞかせてじかに、よりどり見どりをさせる張り見世だったそうだが、それが禁止になって、本人代りの写真を並べるようになった。そして、一番別嬪のおいらんを、通りすがりの客の眼をひくように立たせていたが、これを目当てにして登楼しても、ほかのオタフクを当てがわれてしまうのである。

「どこでもいいや。早いとこ、飛びこもう」

と砂馬は言って、二流の下ぐらいの、ヨオドバ(洋風建築)の店にはいった。一流の家はさすがに砂馬も避けたのである。

朱塗りの手摺に擬宝珠をつけた、橋みたいな階段をあがると、かたぎの女が外ではくフェルト草履をぱたぱた言わせてマワシの客の部屋へ急ぐお女郎の姿が見えた。俺は興ざめのおもいだった。クララの顔が俺の顔に焼きついたまま離れないせいか。