轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「そいじゃ、あれは、トランクのなかに……」

「いいえ。あんたが持ってちゃ、あぶないわ」

波子は、はだけたえりもとをあわせて、

「あたし、東京へ行きたいの。一緒に連れてって……」

「お尋ね者の俺と一緒に、東京へ……?」

「お客さんはなみのお尋ね者じゃないわね」

「大泥棒か」

「泥棒なんかじゃない」

俺はなぜか、ふーっと溜息をついた。小娘のくせに度胸がある。感歎の溜息だと俺が自分に言いきかせると、

「あれは、あたしが持ってたほうが安全だわ」

と波子は言った。言い切った。

俺はこのとき、血まみれのあの猫に俺自身を感じた。俺自身があの瀕死の猫にほかならないのだ。

「よし、連れてってやる」

俺はそしてこう言い直した。

「一緒に行こう」

ここでむざむざつかまるのは無念だった。だが、駅にだって憲兵が張りこんでるだろうから、はたして京城から脱出できるだろうか。

「あたしが、うまい工合に汽車に乗せてあげるわ。ひとつさきの駅まで行けば、きっと、誰にも見つからない……」

――若夫婦の偽装で、まんまと俺たちは東京へ帰ることができた。

本郷の下宿はおそらく憲兵が張りこんでいるにちがいないから、そこへ戻るのはあぶない。