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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

いずれは玄人あがりと思われる白粉焼けした顔をしかめて言った。

「そんなこと言って、お前さんがかけあえないと言うんなら、じかに言う。お前さんがかけあわないんなら、俺の口から言う」

「おっしゃってごらんなさい。塩をまかれるだけですよ」

まかれたいねとうそぶく砂馬に、やり手は寝不足のしょぼしょぼ眼を、きっと据えて、

「ここには、ここのしきたりがあります」

「そういう遊びは法律で禁止されてるのか」

「そうじゃありませんがね。ここではお茶漬はご法度なんですよ」

「おいらんが、なじみ客の友だちと寝ちゃ、そりゃまずいだろう」

「ですからお客さんにもお願いして、同じ家で、あいかたを変えることはおことわりしているのです。そういうのさえ、うるさいんですから、まして……」

「誰がうるさい」

砂馬はちゃんと知っていて、からんでいる。粘り強く押して行って、落そうとしている。

「おいらんが承知しやしません。クルワにはクルワの仁義がありますからね。ましてや、そんな……」

荒々しい語調ではなく、やんわりと、しかし、はっきり拒絶する。

「いくら、卑しい稼業をしているわたしたちでも、そんなあさましいことは、ねえ……」