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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「慷堂先生だって、大臣なんかになりたくはないでしょう。なれと言ったって、なりゃしないでしょう」

軍人じゃない俺は、上官に対して無礼なとやられる筋合いはないから、ずけずけ言ってやった。

「慷堂先生は何も、一身の栄達のためにどうこうしようという人ではありませんからね」

「そうか」

と中佐は鼻であしらった。このとき、北槻中尉が、

「自分らもそうです」

と言った。すべてを上御一人に奉還し奉るのが自分らの悲願だと言って、

「事が成就したあかつきは、恐れ多くも宸襟を悩まし奉ったお詫びに、自分らは二重橋で切腹をせねばならぬと思っております」

俺は俺をここへ連れてきた中尉に対して、悪酔いしたみたいなことをその上官に言って、すまなかったと思ったのだが、俺の言葉にむしろ触発された形で、

「軍規を紊り国法を犯した罪も考えねばなりません」

と真剣な声で言った。いいなと感動した俺の耳に、

「それは分る」

上座からの声が聞えてきた。

「よく分るが、後始末をどうするつもりだ。無責任に放り出して、自分だけいい子になろうというのはどんなものか」

「いい子になどなろうとは思っておりません」

「死ぬのは、いつでも死ねる」