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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

テキヤの仲間を集めておいて、すぐさま八方に飛べるようにして貰いたいんだ」

「よし来た。合点だ。そいで……?」

「軍の蹶起とともに東京は大混乱に陥る。そのとき、東京の要所要所に火をつけて火災をおこすんだ。これを丸さんの同志にやって貰うんだ。ホンテラシ(マッチ)一本でやれる仕事だ。手のたりないことなど、気にする必要はない」

「なるほど、火つけ役か。ヤマアラシの火つけ役か」

「米騒動の時だって、たったひとりのおかみさんが、米屋をやっつけろと叫んだだけで、あのすごい焼き打ちがはじまったんだ。日ごろ、不満を胸にいっぱいためている民衆の、その胸に火をつければ、いっぺんに爆発する。たちまち暴動だ」

俺は自分の言葉に昂奮した。俺は丸万に、俺の一番やりたいと思っていることをここで告げた。

「多年の間、民衆を苦しめてきた奴をひとりひとり――外国の革命みたいに、銀座通りの街燈に、しばり首にしてぶらさげてやるんだ。どうだ、痛快じゃないか」

「すげえなあ」

二三年前に、アナーキストの仲間の一人が、銀座のショウ・ウィンドウのガラスを軒なみ、たたき割って歩いたことがある。社会への憤りをそうして爆発させたのだが、警察にひったてられて、眼玉が潰れかけるほど刑事に殴られた。