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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「猫の眼が、夜光るのは、何も猫の眼から光が出るわけじゃない。外の光が猫の眼を光らせるんだ。それと同じように、あんたの眼が光ってるのは……」

「ちょいと待った。猫の眼は、まっくらな闇のなかでも光ってるぜ」

「まっくらじゃ光らない。きっと、どこからか、光をうけて……」

「いや、まっくらななかで光ってた。俺がこの眼で見たんだ」

「そいつは、きっと、あんたの眼が光ってたからだろう。その光で、猫の眼が光ったのだろう」

「やっぱり気ちがいだ」

「あんただって正気じゃない」

「いいよ」

「犬なんかにとっつかれるのは、あんたが何かにとっついてるからだ」

楽しいことでも言ったかのように羅漢は眼を細めた。その眼には、山の湖のようなしーんとしたものがあった。と見たとき、きたない乱杙歯をむき出して、

「あんたが、それをやめりゃ、憑きものも、あんたから離れるね」

「きいたような口を……」

「だって、あんたの眼が猫みたいに光ってるのは、憑きものがついてる証拠だ。それで光るのさ」

「お前さんは一体なんだ」

「あんたは、あたしを知らないのかい」

「知るもんか」

年の見当のつかない羅漢だった。

「あたしは、あんたを知ってる。