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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

の恐喝、あれとつまり同じことなのだが、俺たちはしかし、あれとは根本的にちがう、精神がちがうのだとしていた。俺たちが使いはじめたこのリャクという言葉は、クロポトキンの『パンの略取』から来ていた。「略取」とは掠奪であり、それをつづめたリャク――それが俺たちの使いはじめたリャクなのである。

俺たちにとっては聖典とも言うべきものだったこのクロポトキンの『パンの略取』は、つとに幸徳秋水がそれの翻訳を行っているが、俺が読んだのは、のちにアナーキストの同志が新しく訳し直した本で、その本を俺はいまだに大事に保存している。この『パンの略取』のなかにこんな言葉がある。

「――忍耐を説くのは無駄であろう。人民はもはや忍耐はしないであろう。そしてもし食物が出て来なかったならば、彼らはパン屋を掠奪するだろう」

一部分だけの引用では意味が通じないかもしれないが、この、忍耐しきれない人民の行動を、忍耐しきれないにもかかわらず忍耐している人民に代って、俺たちがやってのける、それが俺たちの行動なのだった。それを俺たちは直接行動と呼んでいた。

その直接行動のなかにリャクがある。それをしかし、俺たちは掠奪とは考えない。