轻松读懂日语经典作品
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「波子さんのおうちで、よく今まで、そんな……」
志奈子を抱いた波子は顔を伏せていた。兄貴が、ちらと眼をやって、
「あんまり苦労をかけるなよ」
どぶ臭い川風が吹いてきた。子供のときから俺にはなじみの鋳物の臭いがなつかしく俺の鼻に来た。
俺は慷堂の家へ行った。慷堂に俺は無意味な人殺しの話も打ちあけた上で、身の振り方について相談をしたいと思ったのだ。
相変らず粗末なその家には、北槻中尉をはじめ数人の青年将校が来ていた。ひとりふたり俺の知らない顔があったが、その青年将校たちと慷堂との間で激論がかわされていた。
俺が久濶の挨拶をすると、慷堂や北槻中尉らは、やあやあと言ったが、すぐさま彼らだけで、俺が来る前からやっていたらしい議論をつづけた。
「南先生は、日本国民はあげて陛下の赤子であるというご意見ですが」
これは俺の知らない青年将校で、
「慷堂先生は陛下を、日本国民の天皇陛下で、国民あっての天皇陛下とお考えなのですか」
南先生とは慷堂と親しい右翼の巨頭の南一光のことだが、慷堂は矢萩のように、南一光は南一光、わしはわしだといった突っ放し方はしないで、
「軍の上層部には、まるで彼らのための天皇陛下というような考えとしか思えん、そうとしかわしには思えんのがいる」