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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
歩いている俺と、それを見ている俺と、二人の俺がいるように、俺が眠っているときの世界と、俺が起きているときの世界とは、ちがった二つの世界なのだ。
こうした詩を、詩のようなものを、俺は病床で書いた。寝ながら鉛筆で、大きな字でワラ半紙に書いていた。
ある日、それが枕もとに散らかっているところへ、玉塚が見舞いに来た。こんなものを書いていると玉塚に、そのワラ半紙の詩稿を見せると、
「ほう。これは面白い。貰ってっていいかね」
雑誌に売ろうと玉塚は言うのだ。売りものになるわけはないと俺は言ったが、玉塚は売れると主張して、
「名前は――加柴四郎でいいかね」
「いや、そいつはまずいな」
加柴四郎という名はあくまでテロリストにしておきたい。
「野中――薫とでもしておくか」
と俺は言った。その野中薫の詩が、玉塚の紹介で、ある雑誌に掲載された。俺は自分の書いたものが売れるとは思わなかったが、売れたのである。
雑誌を見ると、あの「貝が舌を出すように」という詩はのっていなかった。
「あれは、ちょっと……」
と玉塚が言った。あれは売りものにならないという意味か。しかし俺にはあれが一番好きな詩なのだった。