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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

その六 銃殺前後

有為の少壮将校を重要な第一線に赴かせるという美名の下に、国外追放を企てたのである。

北槻大尉らはついに蹶起した。いわゆる二・二六事件がこれである。

その六 銃殺前後

蹶起のことを病床で知った俺は、しまった! と叫んだ。病いに倒れていなかったら、当然俺は彼らと行動をともにしていたはずだ。ともにすべきだったと俺は俺の病気が、いや、不運がくやしかった。

不運? ――俺にはたしかに不運と感じられたのだった。だって不発に終ったあの三月事件、十月事件に俺は参加しておきながら、今度こそは不発でなくついに実現を見た、しかも北槻大尉らが中心のこの二・二六事件にこの俺が無縁だったということは、なんとしても残念だった。理窟抜きで、無念至極だった。

北槻大尉に俺は会いたかった。だが、どこへ会いに行ったらいいのか。蹶起部隊は首相官邸をはじめ、陸軍大臣、侍従長の官邸、内大臣、大蔵大臣の私邸、それに陸軍省、警視庁等を襲撃し、そのままその場所を占領していたが、そのうちのどこに大尉がいるのか俺には分らなかった。

慷堂に聞いてみようと家へ電話したら、留守だった。家にいないのは当然だと思われた。