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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
それを俺は知らなかったのだが、のちに俺がこの事件に荷担の容疑で捕えられたとき、歩哨線通過の合い言葉や通行証のことを知らなかった事実が、事件とは俺が無関係だったことの証明になった。――
俺は北槻大尉と官邸で会うことができた。玄関さきまで出てきた大尉に、おめでとうと俺は言った。大尉は無言のまま、逆にむしろ唇を固く結んだ。
手伝うことがあったら、やらせてほしい、やりたいと俺は言った。不参加が俺には面目ないおもいであり、参加の誘いがかからなかったことは不満のおもいでもある。
ありがとうと大尉は言って、
「今は大詔の渙発を待つだけだ」
なすべきことはなしたと言わんばかりだったが、手をこまねいて待っている形なのが俺には不可解だった。待ってないで宮城にはいったらどうか。
そんな畏れ多いことはできないと大尉は言って、
「自分たちは政治にまで容喙する意志はない」
そのほうは自分たちの任務ではない。すでに蹶起のことは天聴に達し、自分らの行動を諒とする旨、軍でも言明している。あとのことは真木大将らにまかせてあると言う。
だが、その真木大将らにあらかじめ蹶起のことが知らせてあったのではない。