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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「そうすりゃ、矢萩大蔵はもっと喜ぶだろう」
さあどうでしょうとロクは薄ら笑いを浮べて、
「先生の身内になると、そこははっきりさせないことには……」
「二万ばかしのビャク(金)でこの俺が自分を売れるかってんだ。ヤイツキ(子分になる盃)をかわすかどうか、そいつは上海へ行ってからの相談だ」
――丸万とロクの両方から、つまり砂馬と矢萩のいずれからも金をせしめた俺は、いよいよ上海へ出発ときまった。波子はヒンヤマ(金)を見て、腰を抜かさんばかりにびっくりして、
「こんなお金、どうしたの」
「気持さえ変えれば、ざっとこんなもんだ」
「いやだわ。ねえ、どうしたのよ、このお金」
「心配することはない。上海でもっと稼いでくらあ。ケチな飲み屋なんか、もうやめな」
軍と誼を通じている砂馬は、飛行機で往復しているらしかったが、俺はそうはいかなくて船だった。長崎から上海行きの船に乗りこんだ。
すでに朝鮮へは渡ったこともある俺も、上海となると緊張した。上海まではたった一昼夜の船旅だが、ひどく遠くへ行くような気がする。だが、その船の三等船客のなかには、つい近所へ買い物にでも行くみたいな恰好のおかみさんもいて、ちびた駒下駄を気楽につっかけているのを見ると、俺は自分の緊張が、