轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
川と言えば、日本の場合はどんなに大きな川でも、どんなにはばの広い河口にしても、川であることを人に告げる両岸の存在がすぐ眼につくものだが、この揚子江はたとえば瀬戸内海の真中から四国でも望むみたいなもんで、しかも山のない岸は、遠いだけでなく、低くて、てんで眼にはいらない。そんな河口を溯って、上海へ着くにはさらに数時間を要するのだ。
島国の日本などとは異なる、中国という国のどえらい大きさを、そのどえらい揚子江がまずもって俺に告げる。
(大変な国と戦争をおっぱじめたもんだ)
昼食ののち俺は、相客と鼻をつきあわせていなくちゃならない船室を避けて、食堂の隣りのサロンにいると、双眼鏡をものものしく胸にぶらさげた若い男が俺のそばに近づいてきた。前夜、船室で「あーあ」と溜息をついた男で、お互いに屑鉄屋のあのゲーゲーに悩まされたことが俺たちを暗々裡にすっかりもう親しくさせたかのような口調で、自分は新聞社の特派員だと言い、風巻という名だと自分から名乗りをあげた。俺と同じ齢ぐらいなのも、俺に親近感を寄せさせていたようだが、ほんとうは職業的な直感で俺をカタギの人間ではないと睨んで、何か興味を持った様子である。