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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
問いもせぬのに自分から言った。
上海の虹口で雑貨商を営んでいるというこの男は、自分が留守の間、中国人の番頭に商売を頼んできたと言う。戦争の相手のいわば敵国人に大事な店をまかせてきたのだ。日本人に頼むより、信義を重んじる中国人のほうがはるかに信用がおける。
「日本人なんかより、ずっと安全ですよ」
そして彼はこうも言った。上海の中国人は、今度の戦争を中国人と日本人の間の戦争というより、日本の軍部と中国の蒋介石政権との戦争だと見ている。一般の民衆には関係ない戦争だと見ている。
大体が戦争、政争といったものに対しては、
「――阿拉勿関」
知らん顔というのが中国人の伝統で、
「民衆同士、人間同士は仲良くやっていこうというわけですよ」
と老上海の雑貨商は言った。
こういう中国人観と全然反対のことを言っている声も、甲板から聞かれた。中国人の抗日侮日が今度の戦争を生んだと言う。暴戻支那を徹底的に膺懲すべしと言うのだ。
「現に、あんた(と、上海行きは初めての渡航者らしいのが、その声に怒りをこめて)日本の商品をシナさんは仇貨と呼んでるんですからね。外国商品をつかまえて仇貨だ敵貨だなんて、そんなひどい名で呼んでいる国が世界中どこにありますか。