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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「あーら、よく分ったわね」

とロクは喜んだ。喜ぶのは変なのだが、ロクは喜んで――喜ぶとそうなるのか、女の語調で、

「気をつけてちょうだいね」

「ありがとよ」

「では、あたしの頼みも聞いて貰えません? 奥さんから、あたし、頼まれてんです」

「奥さん? ああ、あの百成綾子か」

「ぜひ会いたいって――それを、あたしから頼んでみてくれって」

「俺の来たこと知ってんのか」

「そりゃ、もう、すぐ……」

ロクは、へへへと笑ってから、

「ちょっと寄ってあげて下さいな。どこか、お急ぎなんですか。あんまりお手間はとりません。ねえ、いいじゃないの。あたしがご案内します」

「よし、行ってみるか」

照子のカフェーは、ほんとに夜のほうがよさそうだ。

「では、車に乗りましょう」

すぐさまロクは手をあげて一台の黄包車を呼びとめ、中国語で行き先を言った。だが、すぐさま乗ったりはしないで、ロクは車賃を聞いて、それは高い、そんな値段じゃ駄目だと、骸骨みたいに痩せた老車夫を相手にかけあった。骨と皮みたいな老車夫に俺は同情して、いい加減のところで折り合えと言いたかったが、ロクは執拗にまけさせていた。やがて車夫はなさけなそうな声で、