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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
(留守なのは、見りゃ分るだろう)
と言った顔で無視して、俺に、
「よく来て下すった。さあ、奥へ……」
じゅうたんを敷いた洋間の奥に和室があるのだ。外国の応接間みたいな(と言っても、映画でしか知らないが)その洋間のストーブには石炭が景気よく燃えていて、部屋がぽかぽかと暖かなのも、いかにも贅沢な暮しを思わせる。外から見た貧弱な公寓の感じとはまるでちがう。
アビルは俺を奥へ導きながら、
「上海へは、加柴さん、いつ?」
おや? と思った俺の口を封ずるようにロクが、
「いつ来ても、この部屋は――結構ですね」
それなり俺たちは和室にあがって対座した。
「どうです、上海の印象は?」
綺麗な歯並みを見せてアビルは微笑した。きたない乱杭歯だったのにと俺は俺の眼を疑った。色白の、むくんだような顔も、かつてのアビルと同一人物とは思えぬ変りようだ。留置場で初めて会ったときの、あの黒光りした羅漢みたいなアビル、ひょうたん池のほとりのあのガタ公みたいな、でも何か神秘的だったアビルとは――ラツサゲ(人相)が単に変っただけではない。上海の印象なんかより、このアビルの異変について語りたいところだが、