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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

上海は家が払底していて、どんな小さな家でも部屋でも金になる。戦火で家を焼かれて田舎から逃げてきた難民は、この寒空に道ばたで寝ている始末だ。いかに家がないか……」

「ひでえテッカリカセギ(火事場泥棒)だ。火事泥だな、そいつは」

船で会った老上海の雑貨商は、中国人の番頭に留守を頼んだと言っていた。日本人に頼むより安心だと言っていたことが、ここでなるほどとうなずかれる。

「シナさんの持ち主が、そいで家に戻って来たら……?」

「買い戻せと大金をふっかける。こっちはただでぶんどった家だけど、そこは修理代だとか、保管料だとかいろいろ理窟をつけて、金を出せば返すと、表面はおとなしく持ちかける。それが、すごい金額だから、とうていシナさんには買い戻せない」

強奪だと、「河向う」なら工務局あたりへ訴え出ることができるが、こっちでは泣き寝入りのほかはない。

「驚いたね」

屑鉄買いなんかはまだおとなしいほうだと俺は思った。

ロクは腕時計をのぞいて、

「あたしはちょっとほかに用があるんですが、中座すると、あとでなにを言われるか……」

「心配かい。それはお互いさまじゃないか」

と百成はからかった。