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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「はい、どうぞ」
と香りの高い玉露を俺に出した。
「や、どうも……」
ロクには出さなかったこの茶を俺は口にふくんで、こんなうまいウジ(茶)を日本ではいまだかつて飲んだことがないと思った。茶は熱ければ熱いほどいいと思っていたが、それは番茶なんかのことだ。これはぬるい茶だったが、とろりとしたなかに、なんとも言えない甘さがあった。百成の茶の出し方が上手なのだ。日本人が嫌いだと言う百成が、もっとも日本人的な茶の出し方に長じているのは奇妙だった。
「俺は何も……」
百成はもう俺と言った。上品な玉露を飲みながら、伝法な語調で、
「ひとのせい、時代のせいにするわけじゃないが、そんなのは嫌いだけど――悪時代に生きるには、こっちも悪のエネルギーを発揮しないことにはやっぱり、面白くない。いつの世も、悪時代でないときはないと言えば、そうだが」
「今の悪時代は特別……?」
「特にひどいと言うんじゃなくて、俺たちにとっての悪時代は現在の悪時代しかない。この悪時代のエネルギーと個人の悪との激突――こいつは妙に魅力がある」
「砂馬もその魅力にとりつかれてる口かな」
「いいや、それはちがう。あれは俗物だ」