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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「ボル派に食いこまれるんだ」
と俺は言い直した。そして俺は、前の言い方には、他ならぬそのボル派の用語の臭いがすると思い当った。ボル派はこういう言い方をするのだった。強権的共産主義が労働者というものをどう見ているか、どう見下しているかを、そこにみずから暴露している。俺たちがボル派に反対するのは、こうした言い方にも出ている強権主義を忌み嫌うからである。
だが、そのボル的用語をアナーキスト組合の労働者が使っているのだ。いわゆる目覚めざる労働者に対して、目覚めた労働者が、こういう言い方をするのだが、それは知らず識らずのうちにボル派の影響が俺たちの仲間に浸透していることを物語っている。いまいましい話だが、それだけボル派に食い込まれているということなのだ。だからそれだけ、俺たちはもっと積極的にボル派と闘わなくてはならないということなのだが、丸万は、
「食いこまれたって、いいじゃねえか。数なんか問題じゃない。敵は幾万ありとても、烏合の衆なぞ、恐れるに足らずだ」
とうそぶいた。
「量より質か」
俺はもうさがってはいなかった。
「その質のために、俺はアナーキズム理論の研究も大切だと思うんだ」