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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その五 二挺の匣槍
「今度はどいつだ。そうか、矢萩か」
俺は金原にコウモリのことは黙っていた。
その五 二挺の匣槍
外套を取りに俺は金原と一緒に、照子のバーへ行った。金原はオーバーのいらない、裏に毛皮のついた大衣を着ていた。
クロークの前で俺は、客を送って出てきた照子と顔をあわせた。
「照ちゃんのおかげで命拾いをしたよ」
思わずそんなお愛想を俺は口にした。あとで――と照子は眼で言わせて、
「なかにおはいりにならない」
「飲むか」
と金原が言った。俺たちはロマンス・テーブルについた。風巻はすでに帰っていた。金原がビールを女給に注文した。根室では眼が赤くただれて、百姓然としていた金原も、見事な大衣を着て、俺の前にゆったりと腰かけているのを見ると、まるで中国の大人のようだった。
「金原君にも改めて礼を言わなくちゃ……」
「ここのママになんで礼を言ったんだ」
それを俺は無視して、
「偶然居合わせたとはいえ、金原君が俺を助けてくれたのは、やっぱりアナーキストのよしみ……?」
「旧アナーキスト」
と金原は訂正して、
「しかし、あんたはやっぱりテロリストだな。思い切って上海であんたもあばれてみるか」
傍の女給が、テロリストとはなんのことかと九州訛りの言葉で言った。