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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その三 黄色い血
ボル派の運動は、そうした俺たちの眼からすれば、労働者をただ単に階級闘争へと動員し、政権奪取へと徴兵して、共産主義という強権の下に、階級戦の兵卒としての絶対服従を命ずるものだった。
ボル派の檄文に「吾人結束せんとするや、彼等直ちにこれを妨ぐ、これを破る」とあるのは、労働者が新たな強権の奴隷になるのを見るに忍びなかったからである。俺たちが強権的共産主義に反対したのはそのためである。
俺たちは労働者の自由を何よりも尊重した。いかなる強権からも服従を強いられない自由を何よりも欲したのである。俺たちはバクーニンの次のような言葉を正しいとしたのである。
「マルクスはプルードンよりも、自由についてのもっと合理的な組織の上に理論的に立つことはできるかもしれない。しかし彼には自由の本能がない。彼は徹頭徹尾、強権主義者だ」
その三 黄色い血
曳舟駅で俺たちは降りた。話は前からの続きである。ごみごみした汚い場末の街は、淡い暮色に包まれていた。そうして俺に何か人なつっこい挨拶を投げかけてくるかのようだった。甘酸っぱいおもいが、俺の胸に溢れてきた。
ごみごみした街の汚さを暮色は俺の眼から隠しているのではなく、ごみごみした街の悲しさをむしろそれはひとしお強めていた。