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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
そうしてどうしようというのでもなければ、何かそのことに意味があって、そうしたのでもない。何か、こう、衝動的にそんなことでもしないではいられなかったのだ。俺はさらに帽子を右手に持ちかえて、左の掌にぴしゃりぴしゃりと叩きつけた。
俺はまだそれだけではものたりなかった。傘をすぼめたみたいになったこの帽子を、俺は不意に空へ向けて投げた。
空の中途で、帽子はふくらんで、斜めにそれは落ちてきた。俺は手をのばしたが、つかみそこなって、帽子は地面に落ちた。
「なにしてんだ」
と丸万は言った。ハンチングをかぶったその丸万に俺は、
「コウモリをからかってやったんだ」
と言って、ごまかした。
「コウモリを?」
とあきれる丸万に、
「コウモリの奴は、こうすると、帽子と一緒に降りてくるんだ」
と俺はまじめに言った。
「降りてこないじゃないか」
と丸万は言った。
「コウモリがいないからだ」
と俺は言った。
「いないのに、なんだって……」
「さっきはいたんだ。いたじゃないか」
「シャッポを投げれば、コウモリがまた出てくると思ったのか」
「そうでもないが」
「なにを言ってんだ」
「コウモリを取った経験ないのか」
「知らんな」