轻松读懂日语经典作品
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
と言うのは、丸万はクララのことをテキ屋のチョウフでガセビリと言った。そのビリとは女郎のことで、ガセとはニセ物の意味である。
ガセナと言えば偽名であり、ガセネタと言えば見かけ倒しの贋造品だ。春画を売ることをガセミツと言うが、昔はほんとの春画を売るんじゃなくて、春画らしく見せかけて、たあいない写真を売ることをガセミツと言ったもんだ。
そのデンで行くと、ガセビリとはニセの女郎、見かけ倒しの売春婦ということになる。玄人に対する素人という意味もあったろうが、公娼に対する私娼をいやしめて言ったものだ。その軽蔑すべきガセビリに俺はすっかり惚れてしまったのだ。
生れて初めての恋だと俺は思う。その初恋の相手が、ガセビリなのだ。
死にぞこないの俺だって、センチメンタルにならざるをえないじゃないか。だが、これは何も、よりによっていやしいガセビリが俺の初恋の相手だということを俺は悲しく思ったからなんじゃない。俺はクララをそんなふうには見ない。しかし、クララがガセビリだということは、たとえ俺がクララをいやしいガセビリだと見ないにしても、そこに俺をセンチメンタルにさせるもろもろのものがある。